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就業規則

使用者側の裁量も残す 詳細に過ぎると硬直化

就業規則は,労働者間の労働条件を統一し,職場規律を維持するために定められる規則です。労務管理は,就業規則を整備することが出発点です。企業によっては,市販されている書式をそのまま自社の就業規則にしているところがあります。確かに,オーダーメイドの就業規則を作成するには,時間がかかりますが,オーダーメイドの就業規則は,適切な労務管理に役立ち,トラブル防止に役立ちます。したがって,企業の規模,実態に応じたオーダーメイドの就業規則を作成するべきです。

例えば,@正社員,パート社員など従業員の種類別に就業規則を作成し,労務管理の規程を整備するべきです。特に,セクハラ,パワハラに関する企業の対応措置を就業規則に記載するべきです。すなわち,禁止行為を定義し,相談窓口を設置し,企業の調査体制,違反者に対する処分,被害者のプライバシー保護などを記載します。

A就業規則が大部になる場合は,退職金規程,育児・介護休業規程,出向規程などを分冊にします。

B就業規則を作成する場合,労働者の義務または使用者の権利,労働者の権利を明確にするとよい。例えば,「〜しなければならない」,「〜してはならない」,「〜することができる」と明確に規定する。特に,就業規則の解釈に争いが生じないように作成するべきです。

C就業規則は,法令や労働協約に違反しないように作成しなければなりません。

D就業規則は,合理的な内容にしなければなりませんが,使用者に対する制約を不必要に過度にしない方がよいです。使用者には,裁量権を持たせるべき場合があります。例えば,配置転換については,「業務上の必要により,職種変更または転勤を命じることができる」と規定します。

E過度に詳細な就業規則を作成すると,労務管理が硬直的になる不都合があります。

以下,就業規則に関する法令の要点を記載します。

常時10人以上の労働者を使用する使用者は,必要記載事項を記載した就業規則を作成し,労働基準監督署長に届けなければなりません(労働基準法89条)。就業規則を変更した場合にも届出義務があります。

必要記載事項には,必ず記載されなければならない絶対的必要記載事項と制度を定める場合は記載しなければならない相対的必要記載事項があります。

絶対的必要記載事項には,@始業及び終業の時刻,休憩時間,休日,休暇,労働者を二組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項,A賃金(臨時の賃金等を除く)の決定,計算及び支払の方法,賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項,B退職に関する事項(解雇の事由を含む)があります。相対的必要記載事項としては,退職手当,安全及び衛生などがあります。

就業規則を作成または変更する場合は,当該事業場に,労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合,該当する労働組合がない場合には労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければなりません。更に,使用者は,就業規則の作成または変更を届け出る際には,労働組合または労働者代表の意見を記した書面を添付しなければなりません。使用者は,意見を聴くだけで足りますので,労働者の同意を得る義務もなく,労働者と協議する義務もありません。

使用者は,就業規則を,@常時各作業場の見やすい場所へ掲示し,または,備え付けること,A書面を労働者に交付すること,Bパソコン等を利用して労働者が常時確認できるようにすること等により,周知しなければなりません。特に,トラブル防止のために,従業員に対し,就業規則の内容を説明し,理解させる必要があります。

就業規則の不利益変更

使用者は,原則として,労働者と合意することなく,就業規則を変更することにより,労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできません(労働契約法9条)。しかし,以下の例外があります(同法10条)。

使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において,変更後の就業規則を労働者に周知させ,かつ,@就業規則の変更が労働者の受ける不利益の程度,A労働条件の変更の必要性,B変更後の就業規則の内容の相当性,C労働組合等との交渉の状況,Dその他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは,労働契約の内容である労働条件は,当該変更後の就業規則に定めるところによるものとされています。

ただし,労働契約において,労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については,就業規則の定める基準に達しない労働条件を定めるものでない限り,就業規則によって変更されることはありません。

なお,就業規則の変更をする場合は,事前に,出来る限り多数の労働者から個別に同意を得るのがベターです。個別の同意が多いという事実は,変更の合理性を補強します。