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男女雇用機会均等法

「間接差別」も禁止に! 企業の社会的評価に影響

「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」(以下,「男女雇用機会均等法」という。)は,女性労働者に対する差別,男性労働者に対する差別を問わず,性別によって労働者を差別することを禁止しています。男女雇用機会均等法に違反することは,優秀な人材の確保を困難にし,採用した労働者のやる気を失わせ,企業の社会的評価を害するおそれがあります。したがって,企業は,男女雇用機会均等法を遵守しなければなりません。

事業主は,労働者の募集及び採用について,その性別にかかわりなく均等な機会を与えなければなりません(同法5条)。

さらに,事業主は,@労働者の配置(業務の配分及び権限の付与を含む。),昇進,降格及び教育訓練,A住宅資金の貸付けその他これに準ずる福利厚生の措置であって厚生労働省令で定めるもの,B労働者の職種及び雇用形態の変更,C退職の勧奨,定年及び解雇並びに労働契約の更新について,労働者の性別を理由として差別的取扱いをしてはなりません(同法6条)。

「労働者に対する性別を理由とする差別の禁止等に関する規定に定める事項に関し,事業主が適切に対処するための指針」(以下,「指針」という。)(平成18年10月11日,厚生労働省告示第614号)は,男女雇用機会均等法を遵守するための行動指針を明示しています。

例えば,指針は,「@募集又は採用に当たって,その対象から男女のいずれかを排除すること。A募集又は採用に当たっての条件を男女で異なるものとすること。B採用選考において,能力及び資質の有無等を判断する場合に,その方法や基準について男女で異なる取扱いをすること。C募集又は採用に当たって男女のいずれかを優先すること。D求人の内容の説明等募集又は採用に係る情報の提供について,男女で異なる取扱いをすること。」は,同法5条違反になるとしています。

指針の具体例によると,@募集又は採用に当たって,男女のいずれかを表す職種の名称を用い(対象を男女いずれかのみとしないことが明らかである場合を除く。),又は,「男性歓迎」,「女性向きの職種」等の表示を行うこと,A募集又は採用に当たって,女性についてのみ,未婚者であること,子を有していないこと,自宅から通勤すること等を条件とし,又はこれらの条件を満たす者を優先すること,B採用面接に際して,結婚の予定の有無,子供が生まれた場合の継続就労の希望の有無等一定の事項について女性に対してのみ質問すること,C男女別の採用予定人数を設定し,これを明示して,募集すること。又は,設定した人数に従って採用すること,D会社概要等に関する資料を送付する対象を男女のいずれかのみとし,又は資料の内容,送付時期等を男女で異なるものとすること等は,同法5条違反になります。

「厚生労働省令で定める措置」については,間接差別も禁止されています(同法7条)。指針によると,「雇用の分野における性別に関する間接差別とは,@性別以外の事由を要件とする措置であって,A他の性の構成員と比較して,一方の性の構成員に相当程度の不利益を与えるものを,B合理的な理由がないときに講ずること」をいいます。間接差別禁止の趣旨は,直接差別禁止の脱法行為を防ぐことにあります。

「厚生労働省令で定める措置」の具体例は,指針によると,@労働者の募集又は採用に当たって,労働者の身長,体重又は体力を要件とすること,Aコース別雇用管理における「総合職」の労働者の募集又は採用に当たって,転居を伴う転勤に応じることができることを要件とすること,B労働者の昇進に当たり,転勤の経験があることを要件とすること等です。

なお,男女雇用機会均等法は,「事業主が,雇用の分野における均等な機会及び待遇の確保の支障となっている事情を改善することを目的として女性労働者に関して行う措置を講ずることを妨げるものではない。」としています(同法8条)。すなわち,性別による差別禁止のみでは,不十分であることから,事業主は,女性労働者の能力を発揮させ,促進するために積極的に取り組むこと(ポジティブ・アクション)が許されています。のみならず,ポジティブ・アクションは,企業の活力を増し,企業のイメージを良くする可能性があります。

ポジティブ・アクションをする場合,事業主は,「機会均等推進責任者」を選任するべきです。「機会均等推進責任者」は,労働局雇用均等室から情報や資料の提供を受けることができます。

企業は,慣行や旧来の意識に囚われず,労働者の意欲,適性,能力に応じて,雇用管理をし,労働者の本来の能力を最大限発揮させるべきです。その結果,女性労働者の労働力を有効に活用することに繋がり,企業の利益になります。