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営業秘密

裁判例示して意識醸成 誓約書の作成も有効に!

 企業は,営業秘密を守らなければなりません。営業秘密は,侵害された場合,損害賠償請求,差止請求,刑事罰によって保護されます(不正競争防止法3条,4条,21条)。営業秘密は,企業の競争力の源泉の一つです。営業秘密を侵害されれば,その営業秘密を利用した同業他社の売上が増加し,その反面,自社の売上が減少するおそれがあります。また,企業は,他の企業の営業秘密を侵害しないようにしなければなりません。他社の営業秘密を侵害すれば,他社から損害賠償請求,差止請求をされ,従業員のみならず,企業も処罰される場合があります(同法22条)。

 自社の営業秘密を守り,かつ,他社の営業秘密を侵害しないようにするためには,まず,営業秘密の要件を従業員に説明し,理解させる必要があります。営業秘密とは,秘密として管理されている生産方法,販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって,公然と知られていないものをいいます(同法2条6項)。すなわち,@秘密として管理されていること(秘密管理性),A有用な情報であること(有用性),B公然と知られていないこと(非公知性),の3つの要件を充たした場合に,不正競争防止法上の営業秘密として保護されます。営業秘密の要件及び管理については,営業秘密管理指針(経済産業省,平成15年1月30日,平成17年10月12日改訂)が参考になります。

 「秘密管理性が認められるためには,その情報を客観的に秘密として管理していると認識できる状態にあることが必要です。具体的には,@情報にアクセスできる者を特定すること,A情報にアクセスした者が,それが秘密であると認識できること,2つが要件となる。」とされています(営業秘密管理指針7頁)。

 「有用性が認められるためには,その情報が客観的に有用であることが必要である。しかし,企業の反社会的な行為などの公序良俗に反する内容の情報は,有用性が認められない。」とされています(営業秘密管理指針8頁)。

 「非公知性が認められるためには,保有者の管理下以外では一般に入手できないことが必要である。」とされています(営業秘密管理指針8頁)。

 営業秘密を保護するためには,従業員に対する労務管理をどうするべきでしょうか。@営業秘密の要件や営業秘密の管理の方法について,従業員を教育・指導することが必要です。さらに,教育・指導によって,従業員に対し「営業秘密を保護しなければならない」という規範意識を身につけさせるべきです。営業秘密と認められた裁判例及び営業秘密と認められなかった裁判例を従業員に教育するのがベターです。管理の方法については,具体的な手順を文書化し,実行できるように教育・指導するべきです。例えば,「情報を媒体に記録した場合は,施錠可能な保管庫に,施錠して保管する必要がある。」(営業秘密管理指針24頁)。「媒体の持ち出しを認める場合には,持出簿を作成し持出管理を行うこと,複写の制限,持出の期間の制限や場所の制限を行うこと」とされています(営業秘密管理指針25頁)。パスワードや鍵を厳重に管理します。日常的に営業秘密の管理状況を点検する体制を構築します。例えば,「誰がどの営業秘密にアクセスできるかを予め特定する。その際には,営業秘密へのアクセス記録を残す」(営業秘密管理指針24頁)。アクセス記録が残るという自覚があれば,秘密漏洩に対する抑止効果があります。

A営業秘密であることが認識できるように,秘密指定マーク等により選別することが必要です。その際,極秘から単なる秘密まで,秘密の重要度に応じて,区分し,管理するべきです。すべて極秘扱いにすると,管理が煩瑣になります。

B就業規則に秘密保持義務を定めるべきです。さらに,従業員に就業規則を遵守する旨の誓約書を書いてもらうのがベターです。ただ,就業規則に定める秘密保持義務は,包括的なものになるので,不十分です。そこで,従業員の地位,職務に応じて,従業員との間で,書面にて,個別に,詳細な秘密保持契約を締結するべきです。営業秘密管理指針(38頁)は,「秘密保持契約に盛り込む内容については,例えば@対象となる情報の範囲,A秘密保持義務及び付随義務,B例外規定,C秘密保持期間,D義務違反の際の措置等があげられる。」としています。単に,秘密保持契約を締結したのみでは,実効性がないので,従業員に対し,「契約には拘束されるべきである」という契約観念を教育することが重要です。

C他社から転職してきた者が他社の営業秘密を開示して,成績を上げようとすることがあります。その場合,他社から営業秘密の侵害を理由として損害賠償請求をされるおそれがあります。そこで,転職する者を採用する際には,「他社の営業秘密を,その承諾なしに自社内に開示あるいは使用させないこと」を記載した誓約書を書いてもらうべきです(営業秘密管理指針35頁)。

 自社の営業秘密を保護し,かつ,他社の営業秘密を侵害しないことが企業の利益になります。