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人員削減

説得内容記録し証拠に 退職勧奨トラブル防止で

 企業は,経営不振の場合,リストラをして,人件費を削減する必要が生じることがあります。リストラの手段として,@労働者から退職を希望する者を募る方法(希望退職),A退職勧奨をする方法,B解雇する方法(整理解雇)があります。

 退職を希望する者を募っても,労働者が退職に応じないこともあります。そこで,退職を希望する者を募る際には,退職に応じる者には,割増退職金を支払うという条件を提示するとよいです。もっとも,割増退職金を支払うこと自体が人件費の増加をもたらしますから,経費削減になるか否かは慎重に検討するべきです。

 希望退職を募る場合は,労働者が募集に応じた場合でも,企業の承認を条件とする旨を定めるべきです。なぜなら,企業に必要な労働者が退職することを防ぐべきだからです。

 退職勧奨をする場合には,退職勧奨が不法行為となり,企業に損害賠償責任が発生しないように注意するべきです。第1に,退職勧奨の対象者の選定が不合理でないようにするべきです。例えば,一つの雇用管理区分において,@退職の勧奨に当たって,その対象を男女いずれかのみとすること,A退職の勧奨に当たっての条件を男女で異なるものとすること,B退職の勧奨に当たって,能力及び資質の有無を判断する場合に,その方法や基準について男女で異なる取扱いをすること,C退職の勧奨に当たって,男女のいずれかを優先すること等の措置を講ずることは,禁止される(労働者に対する性別を理由とする差別の禁止等に関する規定に定める事項に関し,事業主が適切に対処するための指針,平成18年10月11日厚生労働省告示第614号)。第2に,判例によると,被勧奨者の自由な意思決定が妨げられる状況がある場合,退職勧奨が違法となります。自由な意思決定が妨げられる状況であったか否かは,判例によると,退職勧奨の回数および期間,言動,勧奨者の数,優遇措置の有無等を総合的に勘案して判断されます。

 退職勧奨の結果,労働者が退職の意思を決定した場合は,書面で退職届を提出してもらうべきです。なぜなら,後日,労働者が退職の意思表示はなかったという主張を許さないために,証拠を確保する必要があるからです。。

 退職勧奨の結果,退職の意思表示がなされても,その意思表示が取消されたり,無効になったりする場合があります。すなわち,詐欺や強迫による取消(民法96条)や錯誤(民法95条),心裡留保(民法93条)による無効の主張がなされることがあります。企業としては,事実に反する説明や脅迫的な発言をするべきではありません。さらに,退職勧奨をする際,説得の過程での会話を書面に記録し,労働者から,その書面に,内容について同意する旨の署名をもらうのがベターです。なぜなら,後日,取消・無効の主張がなされた場合に備えて証拠を確保する必要があるからです。

 退職勧奨が成功するか否かは,人事担当者の交渉力によるところが大きいです。

整理解雇とは,経営不振等のために従業員数を削減する必要性に迫られたという理由で行われる解雇です。

整理解雇をするには,判例によると,@人員整理の必要性,A解雇回避努力義務の履行,B被解雇者選定の合理性,C手続の妥当性の4つの要件が必要とされています。@人員整理の必要性とは,企業の合理的運営上やむをえない必要があることです。人員整理しなければ,倒産は不可避という状況までは必要とされていません。A解雇回避努力義務の履行とは,整理解雇の前に,使用者は,解雇を回避するためにとり得る手段をとるべきであることです。例えば,残業を削減し,配転,出向をすること,新規採用を中止し,パートタイマーや期間雇用労働者を削減すること,一時帰休,希望退職者の募集などの措置をとること等です。すなわち,整理解雇は,使用者の恣意によってなされてはなりません。B被解雇者選定の合理性とは,客観的かつ合理的な基準に基づいて,被解雇者が選定されることです。例えば,欠勤・遅刻の回数,服務規律違反の回数,扶養家族の有無等は,客観的かつ合理的な基準となります。C手続の妥当性とは,労働者に対し,企業の状況及び整理解雇の必要性,整理解雇の時期,規模,方法等について十分な説明をし,誠意を持って協議することです。なお,最近の判例には,上記4つをすべて充たさなければならない要件とは解さないで,単に,4つの要素と解し,4つの要素に関する諸事情を総合的に考慮するものがあります。

 円満に人員を削減するためには,希望退職の募集,退職勧奨,整理解雇の順に実施するべきです。