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採用時のコンプライアンス

最終面接に顧問弁護士 トラブルメーカーを排除

従業員は,企業の貴重な戦力です。企業の成長は従業員の質に大きく依存しています。したがって,トラブルメーカーを採用せず,優秀な人材を確保したい。採用の際にコンプライアンスを守りつつ,優秀な人材を確保するには,どうするか。 

採用の時点で,将来,トラブルを起こす者を採用しないようにできれば,一番の労務管理になります。採用担当者の責任は重大です。採用担当者は,応募者が法令,就業規則を遵守する規範意識を持っているか,見極める必要があります。

しかし,人物を見極めるのに熱心な余り,応募者に何でも質問してもいい訳ではありません。採用担当者は,特別の業務上の必要があり,収集目的を示して本人から収集する場合を除き,@人種,民族,社会的身分,門地,本籍,出生地その他社会的差別の原因となるおそれのある事項,A思想,信条,B労働組合の加入状況の情報を収集してはなりません(平成11年労働省告示141号)。したがって,本人の人格権やプライバシー権を侵害する質問をすると,使用者は,不法行為に基づく損害賠償請求を受けるおそれがあります。

採用選考過程における健康診断において,本人の同意なくB型肝炎ウィルスに関する病状を調査したことがプライバシー権を侵害する違法があると判示した裁判例があります。従って,少なくとも健康診断の必要性や検査項目を応募者に説明して,事前に健康診断の同意を得ることが必要です。

労働者の募集条件と労働契約締結時の労働条件が異なるとき,トラブルが発生するおそれがあります。虚偽または誇大な募集条件は,企業の品格を失わせます。使用者が募集条件を信頼した応募者の期待を裏切った場合,信義誠実の原則に違反することがあります。したがって,募集条件は,正確に明示するべきです。

企業としては,事前に就業規則を整備し,採用の際,採用内定者に就業規則を説明するべきです。就業規則の内容を知らせないまま採用すると,トラブルの原因になります。

採用する際,労働者に誓約書に署名してもらうことは有用です。誓約書によって,労働者の自覚を高め,トラブルを防ぐ効果があります。誓約書には,@就業規則の遵守,A秘密保持義務,B競業避止義務,C配置転換,出向等の人事命令に従う義務,D使用者の名誉・信用を毀損しない義務,Eセクハラ,パワハラしない義務,F暴力,横領,窃盗,背任など犯罪行為をしない義務を記載します。なお,誓約書の内容が不合理である場合は,誓約書が無効になるおそれがあります。

また,労働者の親族等との間で,身元保証契約を締結した方がベターです。労働者は,身元保証人に迷惑をかけたくないため,身元保証契約は,トラブルの防止に役立ちます。ただし,身元保証ニ関スル法律は,身元保証人に対する通知義務を負わせていますので,使用者は通知義務を履行しなくてはなりません。

採用内定を出す場合は,内定通知書に,内定の取消事由を明記するべきです。事前に取消事由を明記すれば,応募者の納得も得やすい。なお,判例は,「採用内定の取消事由は,採用内定当時,知ることができず,また知ることが期待できないような事実であって,これを理由として採用内定を取消すことが解約権留保の趣旨,目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができるものに限られる」と判示しています。内定の取消事由は,例えば,入社時に学校を卒業できない場合や経歴詐称の場合などに限定されますので,採用内定を出す場合は慎重にするべきです。

使用者が一方的に内定者に研修を受ける義務を負わせることはできません。研修は,内定者の同意が必要です。

採用する際,試用期間を設定するべきです。裁判上,本採用した後の解雇よりも,試用期間中の解雇が有効であると認められやすい。しかし,判例では,試用期間中の解雇にも,「客観的で合理的な理由が存し,社会通念上相当して是認されるものでなければならない。」とされており,無制限ではありません。

使用者は,原則として,採用の自由があります。しかし,採用の自由も法律によって,制限されています。例えば,@女性の差別的取り扱いの禁止(雇用機会均等法5条),A15歳未満の児童との労働契約締結の禁止(労働基準法56条),B一定数の身体障害者または知的障碍者を雇用すべき義務(障害者の雇用の促進等に関する法律43条),C継続雇用制度の規制(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律)などがあります。

採用時のコンプライアンスを守ることが,従業員と企業との良い関係を築き,結局,企業の利益につながります。

 


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